マルセイユから急ぎ足でヴェネチアへ向かう。
イタリアでの時間をゆっくり過ごしたかったのでできれば今日中にでもイタリア入りする予定だった。
マルセイユは流石に大きな街でもあってhitchwikiにも良さげなポイントが色々と載ってる。その中で近場の場所を選びポイントに向かうとすでに他のヒッチハイカーが立っていた。行き先はバルセロナこんな場所からそんな行き先を書いたボードを持ってるなんて多分まだ挑戦し始めたばかりなのだろう。と、思ってしまってる自分は少しヒッチハイク技術が向上してきてるのかもしれない。
直接話しかけたり、少し場所を移動したりして待つ事20分、一台の車が止まってくれた。大きなワゴンだったのでバルセロナ行きの彼も途中まで行けるだろうと呼んであげたら、すんなり断られてしまった。なので僕たちだけ乗せてもらい近くの街まで連れて行ってもらう。
話をしているとやはりこの人もヒッチハイク経験者で色々と海外を見て周った経歴がある模様。ヒッチハイカーがいたらとりあえず乗せてあげてるみたい。
そして向かい先の街はその人が生まれ育った街でとても綺麗な街らしく、寄って見て行くことをお勧めされた。どうしようか悩んでいるとうちに泊まって行ってもいいから見て行きなよとヒッチハイカーあるあるな展開に。この人とこうやって出会えたのも何かの縁なのでお言葉に甘えてお邪魔させてもらうことにした。
ちなみにこの人はワインメイカー。まだ仕事途中で仕事場に戻らなければいけないらしい。ということで僕らは街でプラプラして時間になったら仕事場近くまでバスで移動、そして合流。という流れになった。
お勧めしてた街はポールセザンヌという画家が愛した町として有名らしく、確かに街はゆったりと趣があって良かった。街中を歩き回わって時間が来てしまったのでバス停に移動。そして待ち合わせ場所へ。
向こうも時間通りに到着してて無事合流完了。
そして「ちょっと俺の仕事場を見ていく?」って事で帰り際にワイナリーにお邪魔することになった。
到着して中に入るともう見慣れてしまったワイナリーの光景。全体的に赤とロゼが多いみたい。
一通り見て回ったあと「どれにする?」と一言。
!?!?
なんと試飲させてくれるらしい!何かとワインに関わることが多いなと思いつつ、オススメのものを試飲させてもらった。
おもむろに樽の蓋を開けてでかいスポイトのようなものを突っ込む。そしてそれをそのままグラスに。贅沢すぎる。。。
シラーズとシラーズより辛口のもの2種類を試飲させてもらった。シラーズはオーストラリアで最も有名なワインなのでどれだけの違いがあるのかなと思ったけど、こっちのワインの方が上品で雑味がなく全然美味しかった。フランスにきてなんだかオーストラリアのワインに疑問を持ち始めてしまっている。。。笑
3杯も頂いてほろ酔いの状態でワイナリーを後にする。そして友達が働くワインショップに寄り道するというので付いて行くと、ここでもワインを試飲させてもらう流れに。ヒッチハイクしてただけなのに本当にいいのだろうかとも思いつつ、好意に甘えてワインを頂く。それも2杯。赤ワインを頂いたが残念ながらどんな印象かは思い出せない。今までの味わったことのないような味だった。美味しかったのは覚えている。
そして再び帰路へ。
が、もう一軒書類を友人に渡さなければならないらしく待ち合わせをしている小さな町のBARへ。とても雰囲気のいいBARでビールを飲みながら友人を待つ。程なくして友人が到着。この人はオーガニックファームで生計を立てており、家も古い家を自分で改築して暮らしているというから、どういった生活をしているのかとても興味が湧いた。しかも最近自分の土地からたまたまトリュフが取れたとか意味のわからない話が出てくる。完全に異常な現象らしく毎日何処かでトリュフが取れちゃうらしい。そして何故かそのまま家にお邪魔させて貰えることになった。
BARを去り際に店主がまたもやワインをご馳走してくれた。また2杯。幸せすぎる。今度は白。スッキリと爽やかな白葡萄の味!ベルギーで飲んだシャンパンを思わせるようなスッキリな味わいでとても好みの味だった。本日すでに7杯目とビール一本。もう軽くふらついている。
そしてその友人の家にお邪魔させてもらう。家はとても古い家だが綺麗に改装してある。全て自分でやったというから驚いた。そしてソファーに座って話をしていると奥さんがテーブルにチーズやパンそして例の物を運んできた。
お酒はこの地域の名物の甘草から作られたお酒。甘酒のようなトロリ?とした甘さで中々美味しい。そしてお目当てのトリュフ。自分でスライスしてパンに乗せて軽く塩をふる。
何気にこの旅では2度目のトリュフ。フィレンツェで紹介して頂いたお店でご馳走になったサンドイッチの中に入っていたのが人生初のトリュフ。そして2回目の今回は惜しげもなくパンの上に乗っかったトリュフ。香りはやはりとても濃厚でなんとも言えない。
そして味は…
断トツでキノコ界No1。いや食材としてNo1か。松茸なんて目じゃない。口の中にクリーミーで濃厚な香り?上質な和牛を食べた後に口に残る油やカマトロを食べた後の上品な油の後味に似た感覚が口の中に広がる。ネットリとした様でしつこくない香り。もうなんて言ったらいいかわからない。頑張って表現しようとしてみたけど的確に表現するには僕の語彙力では到底足りない。
とにかくめちゃめちゃうまい!人間が旨味と認識する成分が全て詰まっているような感じ。
あまりにも高級なので流石に少しは遠慮しようと思っていたけど我慢できずに2度もお代わりをしてしまった。ヒッチハイクからこんな経験ができるなんて本当に夢にも思っていなかった。
このあと夜10時を過ぎてやっとこさ帰宅。すると僕達を拾ってくれたこの人はおもむろにワインを開けて料理を始めた。メニューは仔牛肉のクリーム煮とリゾット。ワインを飲みながらワイワイ話しながら作る。その間面白いゲームをさせてくれた。
ワインテイストの為のトレーニングセット。匂いを嗅ぎ分けて当てるゲーム。古い物なので匂いは変わってしまってる物もあるがとても面白かった。この人は流石にプロなだけあって色んな匂いを嗅ぎ当てていた。
そして出来上がった料理。肉は最高に柔らかくて美味い。本当に最高の1日だ。
間違いなくこの日はこの旅で一番の思い出。始めてあった人間にそこまで思わせる体験をさせてくれたこの人は本当に凄い。僕も日本で旅人に出会ったらそんな体験をさせてあげられるのだろうか。
間違いなくこの日の僕は幸せだった。こんな同じぐらいの幸せをあげられる人間に僕は本気でなりたい。一期一会に全力に答えてあげられる人間に。
今回の経験が僕の何かを変えてくれたとする。同じ様な経験をさせてあげたいと思っている僕がまた新たに出会う人に最高の経験をさせてあげる。その人の中でまた何かが変わる。
そんなサイクルを作れたらこんなに素晴らしい事はない。この旅の最後で本当に何か大切な物を教えてもらった気がした。
翌朝2日酔いを感じつつ、そんな事を思いながら再びヒッチハイクで東に向う。ヴェネチアへ。